老舗「とんかつ むら中」の変わらないもの、変えてゆくこと【下田ベイクロシオ公式マガジン】

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東京の麻布十番で55年。地元の人たちをはじめ、著名人らにも愛された「とんかつ むら中」が下田に移転して3年が経ちました。お店に立つのは、店主の村中康宣(やすのぶ)さん、和子さん夫妻と息子さんの妻である奈緒代さん。家族の“あうん”が息づく厨房では、とんかつを揚げるおいしい音が絶えません。

肉のうまみを閉じ込めたとんかつ

黄金色に揚がった熱々の一切れをほおばると、サクサクの衣から肉汁がしたたり、口の中にジューシーな甘さが広がる。食べ応えがあるのに、脂が軽く後味はさっぱり――。

絶品のとんかつを提供するむら中。「高温の油でサッと揚げたあとに、もう一度低温でじっくり火を通すんです。そうすると肉のうまみが逃げないんですよ」とは、店主の村中康宣さん。

むら中のメニューは、「特製ロースかつ定食」、「ロースかつ定食」、「ヒレかつ定食」、「特製ポークソテー定食」(数量限定)のほか、月に一度の「メンチカツ」や夜限定のとんしゃぶ鍋」(要予約)も。定食はどれもボリュームたっぷりで、テーブルからは「おなかいっぱい!」というお客様の満足そうな声がよく聞こえます。

新天地・下田に至るまでの家族の軌跡

康宣さん、和子さん、奈緒代さんの3人が仕切る厨房。

むら中は、1967年に東京の麻布十番に創業したとんかつ店。有名な美食家らが通う名店としても知られていましたが、地元の常連さんや息子さんの友人たちもワイワイと訪れるアットホームな老舗でした。

下田にやってきたのは、先に移住していた次男の勇太さん家族が村中さん夫妻を誘ったからだったそう。「下田は人がみんな優しいし、自然もたくさんある。お義父さんとお義母さんもこっちでのんびりやったらいいのにな、と思って」とは、勇太さんの妻・奈緒代さん。下田移転後から厨房に入り、今や大きな戦力となっているお嫁さんです。

康宣さんの妻である和子さんは、「店があった東京の麻布十番は都心ですが、古き良き下町風情がある町だったんです。でも、時代の流れとともにそんな空気もなくなってきてしまいましたね。そんなときだったので、いい機会だな、と思いました。実際、昭和に戻ったかのような下田ののんびりとした雰囲気に癒やされています」と話します。

「私はもともと高校を卒業したらデザイン業界に就職する予定だったんです。でも、むら中のシェフが倒れて継ぐことになって……。人生何があるかわかりませんね」と言う康宣さん。「もう70歳。引退前、下田の人たちに私たちのこだわりが詰まったとんかつを味わってもらおうと、そんな気持ちでやっています」

60年近くとんかつを揚げてきた康宣さんの大きな手。

老舗の矜持と挑戦

あっさり風味で肉の甘みを引き立てるソース。

豚肉は、康宣さんが35年ほど前に惚れ込んで以来使い続けている平田牧場の三元豚。パン粉は、20年以上付き合いのあるパン粉業者で何種類も試して配合を決めたものです。「三元豚は初めて食べたときに、こんな肉があるのかと驚きました。繊維のきめが細やかで柔らかい。脂肪は甘く上質です。パン粉は自分なりの完成形。ソースも創業からずっと変わらない味なんですよ」

変わらないこだわりもあれば、おいしさを求めて変えたこともあるといいます。

「肉には脂身に切れ目を入れていましたが、赤身にも入れるようにしました。そうすると噛み心地が良くなる。歴史や経験に甘んじることなく、まだまだいろいろ試し続けている途中です。下田では、ソースだけでなくレモンと塩も用意しました。すっきりと食べられて好評です」

塩はできるだけ下田のものを使っている。

「息子のお友達や学校の先生など、麻布十番時代から応援してくださっているお客様がここまではるばるとんかつを食べに来てくれることもうれしいです。そして、下田の方が『こんなとんかつ食べたことない!』とおっしゃってくれるのもうれしい」という和子さんに家族がうなずく。

変わらないものと変えてゆくこと。老舗の矜持に支えられて挑戦を続けるむら中は、下田で絶品を更新し続けています。

お口直しのデザート、柑橘のシャーベットや小鉢は奈緒代さんの手作り。

お店の内装も手がけた家族。チームワークはばっちり!

お店の内装も手がけた家族。チームワークはばっちり!

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